須藤凜々花さんがドイツで博士号を取る道のり

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日本のニュースサイトを見ていて、須藤凜々花が卒業後に「私はドイツで博士号」と宣言した、というタイトルが目に飛び込んできました。ドイツ暮らしが長いうえに、芸能関係に疎いのでNMB48も須藤凜々花という名前自体まず知らなかったわたしなんですが、「ドイツで博士号」という目標に、一体どういう経歴の人なんだろうと気になりました。

博士はもっていませんが、修士をドイツでやったので、ドイツの大学事情はわたしそれなりに詳しいです。

図書館で勉強する大学生

多分いまドイツですごい苦労をしてがんばっている留学生の皆さんは、複雑な感情を抱いてこのニュースを受け止めていると思います。なにせ20歳の目標がドイツの博士号(しかも哲学)ですから。

学士のための大学入学から博士号取得までに10年であればドイツ人でも最速レベル。外国人留学生はもっと時間がかかります。ドイツの大学事情をすこしご説明しましょう。

ドイツの大学に入学するための必要学位

当然のことながら、ドイツの大学で博士課程に入るには、当然ながらまず修士までの学位が必要となります。須藤凜々花さんが修士を取得しているかは調べても分かりませんでしたが、年齢から考えてまず取得していないかと思います。

すでに学士を取得しているのであれば、ドイツの大学の修士課程から入学することも可能です。それにも日本で取得した学士が、これから勉強したい分野と関連がある必要があります。専攻がまったく異なると、普通は書類での入学選考に通りません。

仮に学士を取得していない、となるとドイツの大学で学士から取得する必要がありますが、その場合は日本の大学入試がドイツの大学入学資格のAbiturと同等と認められるはずなので、少なくとも日本でどこかの大学に合格して、かつドイツ語の語学試験か基準に合格してはじめてドイツで大学生になることができます。

ドイツの義務教育は大学入学まで元々13年間で、最後にAbiturという卒業試験があります。ドイツ人がギムナジウムの最後に大学進学を決める試験があることを考慮して、日本の高校卒業資格ではなく、大学合格をもってドイツのAbiturと同等と見なす、と読んだ覚えがあります。(2017年現在のドイツでは義務教育を13年から12年に短縮したところ、12年制の評判が悪く13年制のギムナジウムに生徒が殺到したのでまた13年制を採用する学校が増えてきているところです。)

日本の大学受験をしていない場合は、高校を卒業しても大学入学資格がありませんから、語学試験以外に、ドイツでStudienkollegに通って大学入学資格を取得する必要があります。(詳しくは→http://tokyo.daad.de/wp/studienkolleg-propaedeutikum/)

DAADの情報が最も信頼できますが、ドイツは各大学によって規則が統一されていないことが多々あるので、希望大学に入学条件を直接確認する必要があります。

必要なドイツ語とその他の語学のレベル

ドイツで大学に入るためのドイツ語試験は、仮にドイツ語0のレベルからはじめたら最低でも1年~2年みっちり勉強しないと難しいでしょう。もともと英語やフランス語やオランダ語など、ドイツ語に近い言語のバイリンガルとか上級レベルであれば、日本人でも人によっては半年の集中レッスンで語学試験合格レベルまでいく人もいます。でも半年で大学に入るレベルのドイツ語習得というのは一般人には到底無理な天才レベル。

日本人が大人になってからドイツ語をはじめて、大学で勉強して卒業できるレベルまでいくのは、元々の母国語で大学レベルの学力がある上に、語学の才能にある程度恵まれて、かつ相当な努力がないと無理です。

須藤凜々花さんが仮に哲学科を希望するという話であれば、ドイツ語は学術レベルの読み書きができること、となりますが現実問題としてドイツ語以外にも英語が必須です。ドイツの大学に入学を認められている時点で、英語はかなり出来て当然で英語の試験すらないのですが、英語文献が普通に読めないと大学の授業についていけません。目標が哲学でニーチェな訳ですし。

フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ

ドイツの大学の文系学科では来週の授業までにドイツ語や英語の専門書から何十ページ読んで来なさい、というのが普通にあります。英語圏の留学生が英語で発表をしたり、ゲストスピーカーが英語ってこともあります。

哲学科となると、さらにラテン語か古典ギリシャ語が必修の(カリキュラムに語学試験の受験と合格が義務付けられている)大学もあります。ただ、近年はラテン語も古典ギリシャ語も必修から外す動きがありますが。

ラテン語は大学に入るまでにギムナジウムでも選択できるので、希望する学科が早い段階で決まっている学生は、大学に入る前に勉強してラテン語の試験(Latinum)に合格している人も多いです。大学に入ってから必修でラテン語やる人は、わたしの学生時代、Latinumだけに1年を費やするのは普通でした。「ラテン語試験をなめて他の勉強と並行してやろうとすると、落ちてしまって結局2年を無駄にするからやめたほうがいい」と言われていたんです。

ドイツの大学の博士課程はドイツ人でも大変

日本人がドイツで博士号を取るのは大変です。日本の大学からドイツの大学の博士課程に入学してくる人もいますが、就職が見つかると途中でやめる人も多いです。あるいは博士論文も出したのに内容のレベルが博士に達していない、と却下されて学位を取得できずに帰国した日本の大学教授も知っています。

大学の勉強ノート

ドイツでは博士号の取得には、平均で4~5年かかると言われています。

参照 https://www.academics.de/wissenschaft/dauer_der_promotion_57750.html

しかも実際には博士号を取得する前にどこかで本格的に働き始めてそのまま中退してしまう人もかなりいるので、博士課程に入学した人の全員が平均して4~5年で博士号取得が出来る訳ではないのです。

上の統計の卒業までに4~5年の根拠がどういう計算による数字なのか分かりませんが、文系で博士課程を4年で修了したという人をわたしは知りません。(理系はありえます。)友人知人を見ている限り、文系博士は最低5年、長いと10年以上も普通にいて、いつからやっているのか分からない人もいくらでもいます。

冬の日照時間の少なさと、プレッシャーと、終わりの見えない孤独などのせいかと思いますが、精神的なバランスを崩す人も珍しくありません。

ドイツ人でもそうなのですから、日本人が、となるとドイツの博士号取得がどれほど長く厳しい道のりなのかが想像していただけると思います。

日本人で哲学の博士課程在籍の人や、ニーチェを専門にする人は知り合いにはいませんが、中国の大学で哲学科の修士を取ってからドイツで博士課程で哲学をやってる中国人がドイツ語コースで一緒でしたが、もう10年以上博士課程の学生やってますがまだまだ終わりそうにありません。(同じく研究者の奥さんには子供も生まれて家族揃って幸せそうではあります。→十何年の留学の後、中国で教授になりました。)

須藤凜々花さんがドイツの博士号を取るのは相当難しい

長くなっておりますが、以上の様々な条件から、須藤凜々花さんはドイツの博士号を取るまえに、まずドイツの大学に入学するために相当厳しい条件をクリアする必要があります。

ドイツの博士号を取りたければ、日本で修士まで取得して、その専門分野でドイツ留学をして博士号を取得する、というのが外国人でも比較的楽にドイツの博士号を取得することができる方法です。(あるいは日本で博士を取ってから、ドイツでも取る。)

博士課程からなら受入れ先の大学教授も日本の大学との関係を考えて優遇してくれたりするし、それなりに日本でしっかり専門知識を身につけてからの留学であれば、語学に多少問題があっても、専門知識や研究内容で評価してもらえる可能性があるからです。

学士からドイツで取得する場合は、主専攻以外に副専攻も取る必要があるので、それだけでも日本の大学より大変です。自分の専門だけに専念できる博士課程からドイツ留学する研究者に比べると、最初から高いドイツ語レベルがないと、筆記試験や口答試験をクリアできません。大事な試験は、普通は2度の再試で合格しないとその学科を続けることができません。

須藤凜々花さんがドイツの大学で哲学の博士号を取得したい、というのであれば、日本の大学でまず哲学科の修士号まで取得して、その間にしっかりドイツ語と英語を勉強し、もし希望大学の博士課程がラテン語か古代ギリシャ語が必修であれば、それも勉強しておく、というのが目標への最も楽な道でしょうか。

ドイツの大学で哲学の博士号を須藤凜々花さんが本当に取得できたら、相当な偉業です。時間的には、20歳で学士から始めるのであれば、語学の勉強から入れれば超人的な最速でも10年では足りず、12年~15年後ぐらいになるはずです。

若者の夢が大きいのは素晴らしい!

ドイツの大学はわたしが在学していた当時(2000年代)と違って、学士と修士が別れたり、修士の副専攻がなくなったり、在学年数も短くなっていろいろと改革が進んで、以前よりは学位を取りやすくなっているかと思います。

同じドイツの国立大学といっても、実はかなりなレベル差があるので、語学試験が楽な大学、卒業しやすい大学、卒業しやすい学科、など熱心に情報収集をして最低限の語学と度胸(と運)でなんとか卒業してしまう各国からの留学生もいます。

それにしても20歳で「ドイツで博士号を取る!」はドイツ留学経験者が聞くと、すごくスケールの大きな野望です。しかもニーチェ哲学。困難ではありますが、須藤凜々花さんにはぜひ夢を実現してみんなを再び驚かせてもらいたいです。

ドイツ留学するなら自分でよく調べるべき

いままで興味も必要もなかったので、ドイツ留学関連の情報サイトとかまったくチェックしてませんでしたけど、けっこう適当なこととか、間違ったことを自信たっぷりに書いてるサイトがあります。ビックリしました。

昔とあまり変わっていないなら、州によっても、大学によっても、留学に関する手続きがけっこう違うんです。滞在許可も出やすいところと、出にくいところとでかなり差がありますし。

まずはDAADの情報をしっかり読んで、具体的に希望する大学とかが絞られてきたら、自分でがんばって大学に直接問い合わせをして確認して動いたほうがいいかもしれない。担当者が一向につかまらなくて、慣れない電話で話したり、直接オフィスが開いてる時間に出向いて行ったり苦労しました。

とにかく他人が適当に書いた間違った情報のせいで余計な書類作ったり、手続きが間違ってたりしたら半年や1年すぐにロスします。気をつけてください。

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コメント

  1. 石川茉樹 より:

    ドイツの大学へ正規留学をして修士をとりたいと考えている大学4年生です。専攻は西洋史です。
    ドイツでは、歴史や哲学など、人文系の学問を専門に修士や博士課程に進まれる方で、大学の教員以外の職業や一般企業に就職される方は少ないのでしょうか。

    • AKO より:

      あくまでも知人の範囲だと、人文系は在学中に教員資格を取ってギムナジウムの先生になるひとが多いです。就職も労働条件も色々安定してますから(仕事は大変そうだけど)。一般企業に就職する人もいます。でもこれはドイツでアビトゥーアとって大学行った人たちです。修士や博士から来る日本人留学生でドイツで就職したケースは文系ではあまり知りません。卒業したら日本で大学教員とかドイツ語教師やる人が多い。

      修士と博士は就職でひとくくりには語れません。大学とかのウェブサイトに進路の統計あるかも。がんばってくださいね。