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知っているドイツ語といえばバウムクーヘン
日本人にとても有名で、ドイツのケーキといえばバウムクーヘン、知っているドイツ語は?と日本人に聞くと、バウムクーヘン。好きなドイツのケーキは?と聞くとバウムクーヘン。日本人にはそんな人も多いはず。
ところが、わたしがドイツに来てケーキ屋さんを覗いてみても、スーパーのケーキ売り場を探しても、バウムクーヘンなんてどこにも見当たりません。
日本のバウムクーヘンが有名な理由
それほど好きなケーキでもないので、インターネットが普及していなければわざわざ調べることもなかったと思うバウムクーヘンの由来は、カール・ユーハイム、そう、あの有名な菓子店のユーハイムが日本で売り出したものだったんですね。
日本では第一次世界大戦による敗戦国の捕虜として来日したドイツ人の菓子職人カール・ユーハイムによって持ち込まれ、1919年(大正8年)3月4日に広島物産陳列館(後の原爆ドーム)で開催されたドイツ作品展示即売会において販売されたのが最初である。このことを記念して、毎年3月4日は「バウムクーヘンの日」と決められている。カールは第一次大戦後日本で菓子店を開き、当時はピラミッドケーキという名前で販売されていたが、1960年代からバウムクーヘンの名で知られるようになった[4]。彼の事業を継承する株式会社ユーハイムは、現在も売上300億円の2割程度を占める主力商品としてバウムクーヘンの製造を続けている。そのほか、小規模ながら人気を集める専門メーカー、袋菓子として廉価に全国販売を行うメーカーも多く、日本におけるバウムクーヘンはドイツを凌ぐ一般的な普及をみている。(Wikipediaより抜粋)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%98%E3%83%B3
ドイツではなぜそれほど一般に売られていないのか
ドイツ国内にはバウムクーヘンを売りにしているお菓子屋さんも各地にあります。例えばStuttgartにはhttps://baumkuchenboutique.de/というお店があります。
でもどこのケーキ屋さんにもある、というドイツの定番のケーキではありません。ケーキ屋さんの人気の定番は、チーズケーキ、アップルケーキ、チョコレートケーキ、ロールケーキ、フルーツケーキ、ベリーのケーキなど、バウムクーヘン以外に沢山あります。
バウムクーヘンは焼くのに特殊な設備が必要になるし、ドイツ人にはそこまで大人気のケーキではないので、普通のケーキ屋さんで扱うものではない、少し特殊なお菓子の部類になるのでしょう。日本で言えば人形焼とか今川焼きみたいなものでしょうか。
スーパーにバウムクーヘンが出てくる時期
夏の休暇が終わり、9月に新学期がはじまり、朝晩の気温が低くなってきた今頃、ドイツのスーパーにはもうクリスマスのお菓子が出回りはじめます。
レーブ・クーヘン(Lebkuchen)、プリンテ(Printe)、ツィームト・シュテルン(Zimtstern)、ドミノ(Dominostein)その他色々、定番のクリスマスのお菓子と一緒にバウムクーヘンも登場。広告にも載ったりします。
この時期のクリスマスのお菓子は、だいたい秋から年末までの間は定番としてスーパーで買えるのですが、定番中の定番のお菓子以外、つまりバウムクーヘンのような少しマイナーなクリスマス菓子は、クリスマス前に売り切れてしまって12月後半には見つからなくなることもあります。
スーパーで買えるバウムクーヘンのお味は?
わたしは普段のスーパーの買い物の時にバウムクーヘンを見ると嬉しくなって、毎シーズンに1回は買ってしまいます。なんとなく「また今年も会えたね!」みたいな気分になるのです。
そして買って食べてみて、毎年「うーん、イマイチ。」と思っています。スーパーの袋入りのパウンドケーキ(自分では買いません)と似たような、甘くてドッシリめの食感がむしろ苦手です。
日本にいたときもバウムクーヘンを自分で買って食べるほど好きではなかったというのもありますが、そんなわたしが日本で食べたバウムクーヘンといえば、お客様から頂いた綺麗な箱に入った進物用、結婚式の引き出物。あるいは帰国したときに友達が「これ今有名なんだよ!」とデパートで買ってきてくれた有名店のバウムクーヘン。
そう、わたしが日本で時々口にしていたバウムクーヘンは何千円もする高級菓子。一方ドイツのスーパーで見かけるバウムクーヘンは、握りこぶし2個ぶんぐらいのサイズで3ユーロ前後。グラム当たりで計算しても、桁がひとつ違います。お菓子のグレードとして全く同じ土俵には上げられない。
しかも日本のバウムクーヘンは人気のゆえに独自の進化を遂げていて、厳選された材料、おいしくする様々な工夫、新しい味の開発と日本人の好みに合うように現在も変わり続けているようです。子供の頃に食べたものと、帰国していま流行中のバウムクーヘンで比べてもすでに別物。
昔のバウムクーヘンはパサパサしていてやたらと甘ったるくてしかも外側にアイシングがしてあったりしました。最近いただいて食べたのは、しっとりとやわらかく、甘さはほどほど、バターたっぷり、卵の香りも強かった。
それでも買いたくなるバウムクーヘン
もともとあまり好きなケーキではないうえに、日本で知っていたバウムクーヘンとは別物と分かっていてもなおこのケーキが買いたくなってしまう理由はなんでしょう。
スーパーで今年もまた3ユーロほどのバウムクーヘンが山積みになっているのを見て、反射的にカートに入れて買ってしまい、今回この記事を書こうと思いました。
なぜわたしはバウムクーヘンを買うのでしょう?
日本人にとってバウムクーヘンはドイツのケーキかもしれませんが、わたしにとってはバウムクーヘンは「ふるさとのお菓子」というジャンルに入っているんだと思います。親戚や友人の結婚式、年輪を思わせるケーキの層、日本人の心を捉えたこのドイツ発祥の年輪模様のケーキ。
ドイツ版ポッキーとか、Nipponとかにはふるさとを感じることはないのですが、本国ドイツで季節限定で出回る、あまりに日本で有名になってしまったバウムクーヘンになぜか郷愁を感じます。
だからわたしはこのたいして美味しいとも思わないスーパーのバウムクーヘンを年に1回買うのでしょう。そして毎回「イマイチ」な味を再確認して、年に2回は買わないんです。(でもドイツ人の夫もシーズンに最低1回は買って来ます。)それを毎年毎年繰り返しています。
ドイツのスーパーのバウムクーヘンは、普通はミルクチョコレートとビターチョコレートの2種類のコーティングがあります。甘すぎる物が苦手のわたしはいつもビターチョコレートを選びます。ビターと言っても小さな子供も喜んで食べる程度の”ビター”です。寒い日のコーヒーのお供によく合います。
みなさまもドイツでバウムクーヘンを見かけたら、ぜひお試しください。バウムクーヘンの日本での進化と、ドイツでの進化を比較するのは面白いと思います。